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版の精度とは何か?精度が悪いと どんなことが起こるのか?

印刷で上手く刷れない原因のひとつとして版の精度は重要な要素です。
しかし、実際には良いシリンダーと悪いシリンダーと2本同時に製版して比較しながら印刷などはできないので、シリンダーの精度が原因かどうかは印刷している途中ではわかりません。


井上:(版出荷前の校正刷りを見て)
「このチョコレートの色、右の面は赤茶で、左の面は黄っぽい茶になってない?これまずいんじゃないの。これ同じ柄を横に4回繰り返しただけなんだよね?!」
坂本:(ヘリオ担当)
これは面ムラですよ、藍と墨の同角モアレですよ。墨のアングル変えときゃよかったですね」 
井上:
「う〜ん、そうだね。坂本さん、悪いけど今日残業して墨版、彫り直してくんない、すぐ落版再銅だすから、明日印刷なんだよ、トホホだね」

校正刷りしてから、面によって色が違う(厳密にいえば、同じものはない)ことがけっこうあった。墨のアングルを変えているのにもかかわらず起こることもあった。非常に困る現象である。
同角モアレが原因であることが多い。同じ角度で製版するなんて!
「同角で製版してはならない、これ、製版のいろはのいの字でしょ!グラビアはなに考えてんだ!」と言いたいオフセット経験者の方は多いでしょう。(この問題は母材の精度の件とは話は別なので別途項目設けます)

前置きが長かったですが、実際に精度不良が原因のクレームなどの事例を上げて説明したいと思います。

その前に前知識として以下10項目程

1、 鉄芯は土建屋で使うのと同じ材料で作っている

2、鉄工所ではシリンダーではなく、パイプと言う言葉を使う

3、 パイプには直径が同じでも、厚みによる何段階かの種類がある

4、パイプの厚みを肉厚、丸い穴のあるところの厚みをフランジ厚と言う
    精度は真円度と円筒度であらわされる。
      真円度:シリンダーを輪切りにした時の直径のゆがみ
      円筒度:全長の真円度のばらつき

5、たとえば、590mmのシリンダーを作りたい時、鉄工所で円周が600mmのシリンダーしか在庫が無い場合、は,4mmだけ旋盤で削って191mmの直径を188mmにしますが、そうすると肉厚が(仮に)5ミリあったものが3.5mmになってしまう。

こんなに削らなくて済むよう590mmに近い鉄芯を選ぶか、もっと肉厚の厚いのを選ぶかは鉄工所の裁量(在庫)です。どちらがいいとも言えません

6、 製鉄所(日本鋼管、住友金属とか)から納入されるパイプにはロットにより製鉄所の不良がでるらしい。(具体的には鉄の中の空気によるピンホールがへこみとなってメッキ後にも残ることがある)

7、肉厚は端から端まで均一の厚みではありません。左右、円周で6mmのところもあれば、4mmのところもある、そこに精度が落ちる一因があります。鉄工所では、回転のブレを防ぐために、バランサー(鉄のおもり)を鉄心の中につけます。(タイヤのホイルバランスと原理は同じ)

8、 製版メーカーではどこも、仕事は新規でも、鉄芯を新規につくるのは2割ぐらいではないでしょうか?、他は印刷メーカーから支給された旧管を落版再銅(再利用品)して製版をする為、おのずと支給の版の母材の精度は成り行きになってしまいます。(つまり製版して印刷してみないとやっぱり精度かな?とわからないということです)

9、印刷メーカーではコストを下げる為、ヘリオ製版なのに、肉厚が薄く軽いシリンダーを支給するところもあり、そういうメーカーに精度云々言ってもらちがあきません。
なぜなら、肉厚が薄く軽いシリンダーでも印刷でダメがでることが、少ないのも事実だからです。

シリンダー精度を必要としないような仕事が多いメーカーさんと、まったくその逆のメーカーさんでは、製版を受注したときの覚悟(真剣さ)が最初から違うといっていいでしょう。

10、鉄工所は網グラ用と彫刻用とで鉄の厚みを変えているのが普通です

フランジ厚

肉厚

鉄芯価格

重量

網グラ

10mm

4mm

安い

軽い

彫刻版

20mm

6mm

高い

重い

鉄芯の精度は高速回転してもシリンダーが揺れない為に必要なのである

回転中に振れる鉄芯を作ってしまうと、どういうことが起こるか?

1、 胴メッキが均一に付かない

2、 ヘリオが均一に彫れない

3、結果として、印刷時に均一に刷れない

具体的には

◎ベタ版の左右の濃度差

建材壁紙印刷メーカー(版の幅方向の左端と右端でに9ミクロンのセル幅差がありデルタEが0.8ぐらいの差がでた、壁紙を何枚も貼った時の左右差はデルタEが0.4以下でないと継ぎ目がわかってしまう、極限の色の合致が必要)

 事後処理:旧管をひきなおし(もう1度鉄の状態にもどし、旋盤をかけること)して、メッキし直して彫刻した

◎多面付けの色違い、(面ムラと言う)

ラーメン。1300mm幅で円周400mmぐらいの横6面天地3面に発生 。赤いラーメンと黄っぽいラーメンがある。

  事後処理:旧管をひきなおしして、メッキし直して彫刻した

レンジパネルの袋。これも1300mm幅で、面ムラ発生。同じ柄の多面付けなのに赤いレンジパネルや青いレンジパネルがある。

  事後処理:旧管をひきなおししても直らず再度鉄芯を新管で作り直す

 ◎一部分だけ色が変わる

 ◎見当が左右で違う

精度不良の具体的な現象はほとんどが、彫刻時に起こるセル径の大きさや位置の不良です

ヘリオはちゃんと彫っているのですが、シリンダーの精度が悪い為、結果としてひとつひとつのセル(網点)が指定の大きさ、指定の位置にならず、他色刷りでしたら他の版(赤版だったら黄や藍)と相対的にミクロ的なズレを生じます。

どうすれば精度のある版を作れるのか?

これは、当時非常にお世話になった森脇鉄工株式会社森脇社長に何回か、話を聞きにいってわかったのですが、重いほど良いということらしいのです。
「鉄という材料の誤差を減らすには、肉厚をそれなりに厚くして全体における誤差の比率が減るようにすること、また、フランジ厚も厚くしコーンとの接地面積をふやすことが精度をあげる方法」というアドバイスを受けました。

実際、紙の表刷りのラベルを印刷するメーカーでは、びっくりするぐらい重いシリンダーを使用しています。しかし、費用面でそうもいかないので精度のことは二の次で製版をしているのが印刷メーカーの実情というところではないでしょうか。

関連リンク: コイケ デント化学 ミラック 日商グラビア オークマ 総武機械

アルミシリダーが普及しない理由は別ページで書きます。

注:パイプとか鉄芯とかロールとかシリンダーという言葉を併用してますが意味はほぼ同じです。

                               2006.10.6